MOMENT ICHIKING

ラブライブデイズ、指にキラリ。

魔法のお城の話。

 

0. はじめに

 こんにちは。

 現在ラブライブのオタクをやっている私がラブライブのことを語るためにやっているこのブログですが、今回の記事はラブライブ一切関係ないです。

 今はもうとっくにOBになっているのですが、実は私は大学の学部生の頃、マジックサークルに所属していました。

 この前の日曜日まで自分の大学で学祭が行われていて、そのサークルのマジックショーを何回か見に行ってきたんですね。それで久々に昔いたサークルに触れたらいろいろ思い返してどちゃくそにエモくなっちゃったんで、それを誰かに話してぇ~ってことで筆を執りました。誰か聞いてください。

 

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1. 私の所属していたマジックサークル

 最初に、私が学部生の頃に所属していたマジックサークルがどんなサークルだったのかを紹介しときますね。うちのサークルは“ガチ”サークルでした。

 うちのサークルは関西の大学のマジックサークルの中でも比較的規模が大きめで、1回生から3回生まで合計50人くらいで活動をしています。私の大学は毎年11月下旬になぜか4日間もかけて学祭が行われるのですが、うちのサークルの毎年の活動の目標はその学祭で行うマジックショーです。

 学祭というとメインの広場に舞台が設置されてそこでいろいろなサークルがパフォーマンスをするイメージがありますよね多分。でもうちのサークルはそれとは独立に、少し大きめの教室を借り切って、そこを魔改造してマジックショー用の舞台を作ります。そして1ステージにつき1時間くらいのショーをやります。んで、ステージ毎に演者の組み合わせを変えながらそれを1日に6ステージやって、さらにそれを4日間続けます。入場料を300円いただくのですが、4日間で老若男女のべ2000人以上のお客さんがマジックを楽しんでくれます。

 当然ながら当日はとても大変です。マジックショーをするためには演者だけでなく、音響や照明、道具、進行など多くの人手が必要です。そのためサークル員はみんなある時は演者をやり、別の時は裏方をやり、自分で学祭を回ったりする時間も無いまま忙しく4日間を過ごします。

 もちろん頑張るのは当日だけではありません。それぞれ演者は1年間かけて少しづつ自分の演技を組み立てていくのですが、10月になるとサークル全体が学祭モードに突入し、練習が本格化します。大教室を毎日明け方まで借り切って、土日に至っては24時間借り切って、みんなで練習をしまくります。学祭までに100回通し練習をしろなんて言われたりもしました。あんまりマジックにそういうストイックなイメージはないかもしれませんが、実はマジックってめちゃくちゃ練習しないといけないんです。マジックには表側と裏側があります。裏側には、いわゆる「タネ」、つまり秘密のテクニックや仕掛けがあります。表側には、その裏側が生み出す不思議な「現象」があります。裏側でいろいろなことをやりつつそれを隠し、表側のストーリーや表情、立ち居振る舞いを綺麗に演出してお客さんを楽しませる。マジックを「マジック」として成立させるには、そうやって2つの方向に同時に神経を使わねばなりません。そして本番でそれをやるためには、見た目以上にたくさん練習してしっかりと体に染み込ませる必要があるわけです。だから、お客さんにしっかりと「マジック」を楽しんでもらうために、うちのサークルはガチで練習をしまくるのでした。

 外から見たらたかが学祭です。でもこんなふうに、たかが学祭の4日間のマジックショーのために命をかけるサークルが、私の所属していたマジックサークルでした。

 

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2. 最近の私

 今の私の話に戻りますね。他の記事でも語っているように現在私は大学院生をしているのですが、サークルを引退してから気がついたらもう5年くらい経ちます。他のことが生活の中心になっていく中で、サークルが今どうなってるのかへの関心は無くなり、マジックもプライベートではあまりやらなくなり、サークルでマジックに情熱を注いでいた頃の感覚は、いつしか色褪せた記憶の隅へと追いやられていました。

 そんな中で今年も学祭の時期がやってきたんですよね。あまり関心はありませんでした。なんか今日賑やかだなーって思ったら学祭1日目だったって程度には無関心。同じ場所で過ごしながらももう学祭なんか一切関係無い日々を送っているし、マジックへの興味が薄れているし、それに加えて、サークルメンバーはみんな入れ替わっていて知ってる子もほぼいないに等しい。だから、わざわざサークルのマジックショーを見に行ってもしゃあないなとか思ってました。去年なんぞは完全にそんな気分で、結局見に行きませんでした。でも今年は、かつての同期が見に行くと言うのに合わせ、来年は就職して関西離れるしなーとか思って自分もふらっと見に行ってきました。そしたら思いの外エモくなっちゃって、今こんな文章を書いているわけです。

 

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3. 魔法のお城

 うちのサークルの学祭のマジックショーには、昔から“Magic Castle”というタイトルがつけられています。ハリウッドに実在する有名なナイトクラブの名前をパクっています。無断で。まあそれはさておき、このタイトルには「学祭の4日間だけ現れては消える魔法のお城」というコンセプトがあるとどこかで聞いたことがあります。サークル現役の頃の私はそのコンセプトがただの美辞麗句にしか聞こえなくて、あまりピンと来ていませんでした。つうか「なんでパクッてんねん」としか思っていませんでした。でも今年になってようやく、そのコンセプトちょっと素敵じゃね?と思えるようになったんですよね。これからしたいのはそんな話です。

 “Magic Castle”。毎年4日間だけ現れる魔法のお城。それは一体誰にとっての「魔法」を意味するのでしょうか。もちろんそれは第一には、来てくれたお客さんにマジックを楽しんでもらう場所、マジシャンがお客さんに魔法をかける場所という意味で、お客さんにとっての「魔法」を意味しています。だけどもそれはもしかするともう少し色々な意味を持っているのかもしれないなと、今さらになって改めて思いを巡らせました。

3.1. 今と過去をつなぐ「魔法」

 “Magic Castle”に行ってみると、同世代のOBOGとちらほら会いはするものの、やっぱり現役生で私をOBだと認識してくれる人は誰もいない。まあそりゃそうよね、他人だよねとちょっぴり寂しい気持ちを押し殺しながら、チケットを買います。

 でも教室に入ってショーが始まると私に訪れたのは、なんだか不思議な気持ちでした。知っている子は誰一人いないのに、その場所には自分がよく知っている何かがありました。そこでは名も知らぬ後輩たちが頑張っていて。そんな後輩たちの姿が、仲間と一緒にマジックに想いを注いだあの頃の感覚の中へと私を連れ戻していきます。すっかり忘却の彼方にあった感覚だったので、なんだか旧友と再会したような感じ。「ああ、こんな自分、いたなあ」と。

 今年の“Magic Castle”の舞台に立つ後輩たちの姿は、あの頃の私や仲間たちの姿とよく似ていました。学祭に向けて命を懸けて頑張ったからといって、完璧なものができるようになるとは限りません。演技の組み立て方も技術の上手さも人によって差があって、傍から見ていると、もっとこうしたほうが良いのにな~なんて思っちゃうこともあったりするんですよね。不完全なんです。だけど同時に、どの演技も、その演者が悩みながら心をこめて作り上げた努力の結晶です。そして、舞台でそれを演じているその瞬間には、お客さんの中にも演者自身の中にも、ある喜びが確かな仕方で生まれています。だからその空間は間違いなく、キラキラしていました。


 後から振り返ると、サークルをやっていた頃の自分って至らぬところがいっぱいあるんです。マジックの力量という点でもそうだし、人間としてもそうだった。そうした自覚は引退してしばらくしてからようやく生まれてきて、私をそれなりの自己嫌悪に導きました。例えば、サークルの運営をするのは現役最終学年である3回生なのですが、私は3回生の時かなり重要な役職に就いていました。それは例年サークルのエースマジシャンが就く役職だったのですが、高校の時からマジックをかじっていた関係で他の人よりもマジック力(?)が相対的に高かったことから、私がその役職をやることになったんですね。まあそれで自分なりに頑張りはしたものの、後から振り返るとダメダメなところがたくさんありました。言うほどマジックのことをわかってなかったし、マジックの演技も言うてそんな上手くなかった。失敗もありました。たくさんある仕事を抱え込んで人に迷惑をかけてしまったり、気持ちの余裕が無くて他の人への思い遣りが足りなかったり……。やってるときこそ必死だったのですが、自分はそれはそれは不完全でした。

 でも、あの頃、サークルの仲間たちは私のことをそれなりに認めてくれていたはずなんですね。みんな私のマジックを楽しんでくれて、後輩の中には私のマジックを見てサークルに入ろうと思ったと言う子もいたりしました。そして私は周りの期待のまなざしを感じながら、精一杯サークルのエースマジシャンをつとめようとしました。実際は指摘すべき点がたくさんあるクソザコマジシャンだったわけですけどね。そして一生懸命後輩にマジックを教えました。マジックを誰かに見せるのって、楽しいんです。自分のマジックによって相手が笑顔になってくれる。相手の心が動いているのを直に感じることができる。そんな経験をすると、どんどん楽しくなってきて、どんどんマジックをやりたくなる。今思えば、後輩を指導する私の底にあった気持ちは、マジックが上手くなってもらいたいというよりも、そういうマジックの楽しさを後輩に知ってもらいたいという気持ちでした。こんな簡単な言語化すら当時の私はできなかったので、下手くそな教え方しかできていなかったと思うんですけどね。なんにせよ、後から振り返れば至らないとこばかりで、いったい自分の何が認められていたんだろうと思っちゃう。でも、なんかよくわからないけど、輝いている自分がそこにはいたのだと思います。多分、周囲が認めてくれていたのはそんな自分で、私自身もそんな自分のことが結構好きだったのです。

 2年ぶりに見に行った“Magic Castle”のステージは、ああ、あの時の自分たちもこうだったんだな、と私に思わせました。そして、不完全でも別にいいんだな、とも。あの頃私も仲間たちもみんな完璧からはほど遠くて、だけども不完全なりに、精一杯マジックに想いを注いでいました。かつてそんな自分がいたんだということを、名も知らぬ後輩たちの姿が私に思い出させるのでした。

 

 だから“Magic Castle”の「魔法」は、今年見に行った私にとっては、今と過去をつなげてくれる「魔法」でした。
 知っている後輩は誰一人いないし、もうサークルに私の居場所はありません。私も、あの頃の仲間たちも、今はサークルから離れて全然別々の場所で日常を送っています。だけどそこに行くと、精一杯マジックに想いを注ぐ後輩たちの姿が、私をあの頃の自分に出会わせます。いうなれば、そのお城には今も、不思議な仕方で、かつての自分が生き続けているのです。まるで時の流れなど存在しないかのように。でもそのお城は学祭の4日間が過ぎるとまたどこかに消えちゃいます。それとともにあの頃の自分も再びどこかへ見えなくなってしまって、何事も無かったかのように私の今の日常が続いていく。結局私はまたその自分のことを忘れて生きていくんです。けれども、一年に一度だけ幻のように現れるそのお城は、仲間たちと一緒に精一杯マジックに想いを注いだ自分がいたということを——あるいはそんな自分が今もどこかにいるのかもしれないということを——確かに思い出させてくれます。だから“Magic Castle”は今の私にとって紛れもなく、今と過去をつなげてくれる「魔法」のお城なのだと、今年になって感じました。

おっさんくさいですねこの文章。

3.2. マジシャンをマジシャンにする「魔法」

 そしてまた、“Magic Castle”の「魔法」は、その舞台に立つマジシャンたち自身にとっての「魔法」でもあったのだななんてことも今年は思わせられました。

 例年、学祭最終日の最終ステージは「ファイナル」と呼ばれ、その日で引退となる3回生の総力を結集した特別なステージプログラムが組まれます。今年はしっかりそのファイナルも見に行ったんですが、そのファイナルの司会の子のMCで、私の心に強く残ったセリフが2つありました。ファイナルの司会には、そのステージ専用の特別なセリフを用意する慣例があります。内容が豪華な分ファイナルは舞台転換に時間がかかり、司会がその間をつなぐ必要があるためです。おそらくそのセリフは、その子がファイナルのために特別に用意したセリフでした。

 まず、その司会の子はファイナルの最初のMCで「拍手」について語りました。学生マジックの世界では司会がショーの最初に「拍手の練習」をお客さんにさせることが時々あります。ライブでいう声出しみたいなもんです。彼女はその拍手の練習の後、次のようなことを言いました。「拍手は、手のひらと手のひらを合わせて音を出すだけの簡単な行為なんだけど、マジシャンにパワーをくれる魔法なんです」と。

 また、大トリの演者の準備を待ちながら行った最後のMCで彼女は、自分たちを支えてくれた後輩や先輩への感謝の言葉を述べたあと、来てくれたお客さん達に対しても感謝を述べました。彼女はこう言いました。「お客さんの存在が私たちをマジシャンにするんです」と。

 素敵なセリフです。それらのセリフには、彼女がマジックサークルで過ごした時間のすべてがつまっているように感じました。学祭に向けて練習している期間って、自分のマジックのどこが面白いのかがわからなくなったり、何が楽しくてマジックをやっているのかがわからなくなったりして、しんどくなってしまうことが結構あるんですよね。でもなぜか学祭の当日がやってくると、そんな悩みがどうでもよくなるくらいに、マジックを楽しいと感じてしまいます。訪れるたくさんのお客さんの笑顔と拍手にどんどんパワーが湧いてきて、もっともっとマジックがやりたくなってしまいます。そうやってマジシャンとしての自分のことが少しだけ好きになってしまう4日間、それが“Magic Castle”の4日間です。残念ながら私はその司会の子のことをよく知りません。でもきっと、サークルで過ごす中でそんな“Magic Castle”を毎年経験してきたからこそ、彼女は「拍手は魔法なんだ」と言い、「お客さんの存在が私たちをマジシャンにする」と言うんです。彼女が胸を張って言うその言葉は、それまでの日々が必ずしも楽しい時間ばかりじゃなかったからこそ出てくる言葉で、しかし同時に、それでもやっぱりマジックが大好きだと思うようになったからこそ出てくる言葉。だからそのセリフは、真心のこもったたまらなく素敵なセリフです。

 んでその「お客さんの存在が私たちをマジシャンにする」っていう感覚って多分、サークルをやっていた頃の私が感じてたマジックの楽しさそのものでもあって、だから、私が後輩に知ってもらいたいと思ってた感覚そのものでもあるんですよね。自分なりに精一杯こだわったマジックを見てくれる相手がいて、その相手が目の前で笑顔になってくれるから、どんどん楽しくなってきて、もっともっとマジックをやりたくなる。上手い下手とかはあんま関係なくて、そういう感覚を知って手離せなくなったときにこそ、そいつはマジシャンになったと言えるんだと思います。だからお客さんの笑顔や拍手って間違いなく、マジシャンをマジシャンにする「魔法」なんですね。当時の私はこういうことを全然言語化できなかったんですが、それを何年も後の後輩が今的確に言葉にしてくれたことに、なんだか不思議な、そして幸せな気持ちを抱きました。ああ、あの頃の私も、今の後輩たちも、この学祭のマジックショーの舞台で、全く同じ「魔法」にかけられているんだなって。

 “Magic Castle”に訪れるお客さんの拍手や笑顔が、このサークルのマジシャンをマジシャンにしていく。“Magic Castle”の舞台に立つマジシャンたちは時の流れとともに入れ替わっていきますが、上のような意味で、毎年たった4日間だけ現れるそのお城は、サークルを担うその時々のマジシャンたち自身にとっての「魔法」のお城でもあったのかもしれません。

 

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4. おわりに

 まとめます。
 “Magic Castle”。毎年4日間だけ現れる魔法のお城。それは一体誰にとっての「魔法」だったのでしょうか。もちろんそこには第一に、そこに来てくれるお客さんにとっての「魔法」という意味が込められています。でももしかしたらそれだけじゃなかったのかもなと、今さらになって思います。ここまで語ってきたように、それは、今はもうサークルから離れて生きている私のような人間にとっての「魔法」でもあったし、サークルを担うその時々のマジシャンにとっての「魔法」でもあったのでしょう。この魔法のお城は、学祭の4日間が過ぎるとまたどこかへ消えてしまいます。普段はこのお城は、どこにも存在していないのです。でもまた一年が経つとどこかから現れて、人々を「魔法」にかける。それがずっと繰り返されながら、年月は流れていくのです。

 あの頃は成功させようとただただ必死で、こういう眺め方をしたりはしませんでした。でも時間が経ち距離ができた目線から、今私は“Magic Castle”を上のようなものとして眺めるようになりました。それは今の私にとって、ちょっぴりせつなくて、とても大切な場所です。

 ということでこれからも私の知らない後輩たちがこの素敵な“Magic Castle”を受け継いでいってくれたらいいなって思いますね。やっぱおっさんくさいですねこの文章。

 

 最初の方で言っていたように、自分がかつて所属していたマジックサークルのことを最近ほぼ忘れて生活していたんですけど、学祭で久々に触れたらエモエモになっちゃって、長々と語ってしまいました。結局何がしたかったのかというと、「昔こういう素敵なサークルに所属してて、今もそのサークルのことが大好きなんすよ」っていう話を誰かに聞いてもらいたかったっていうただそれだけですね。

 というわけで長くなっちゃいましたが、ここまでお付き合いいただきどうもありがとうございました。

 

 

 ***Thank you for reading***