深呼吸の時間

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Liella! 2ndライブ横浜公演Day1、伊達さゆりさんのMCから感じたこと

Liella! 2ndライブ横浜公演のDay2を現地で経験した感想はすでに書いたが*1、今回はそれとは別に、横浜公演で心に残った箇所の話を一つ(真面目なテンションで)したいと思う。

それはDay1のライブ終わりの、伊達さゆりさんのMCについてだ。あくまで個人的な感覚であるが、今回のライブは1stライブツアーと比べて、キャストの人間としての姿がくっきりと見えるライブであったように感じる。そして件のMCは私にとって、その最たるものであった。

なお今回は肩に力を入れずにゆるっと文章を書いていくので、これを読む方も、ゆるっとお読みいただければと思う。


     * * *


Day1は配信で見ていたため、アーカイブを見返して文字起こししてみた。まずはそれをそのまま書き記しておこう。なお、言いよどみ等は一部省略してある。


彼女は、そのMCで、この日自分が披露した「青空を待ってる」の歌詞に触れるところから話を始めた。

あたしその中の歌詞ですごく大好きな部分があって、「きっときっと一度生まれた思いはずっと消えたりしない」っていう歌詞があるんですけれども、すっごく大好きで、ほんとにその通りだなって思っていて……


一度生まれた思いは消えたりしない。彼女がこの歌詞になぞらえて語ったのは、好きなものを好きでい続けることの難しさというものを、1stライブツアーで、生まれて初めて経験したという話だった。

自分が好きだって思うことだったりとか、そういうものをより極めていったりだとか、もっと頑張りたいんだとか、好きでい続けるのって、そう簡単じゃないなっていうのを、私は1stライブツアーの時にはじめて、生きてきて経験しまして、たぶんみなさんもたくさん経験されてると思うんですけれども、私は歌詞にすごく背中を、かのんちゃんから押してもらって……


そして、彼女は続ける。もし、好きだと思っていた気持ちが間違っていたんじゃないかと自信がなくなることがあったとしても、その好きな気持ちを忘れないで大切にしてほしい、と。

なんだろう、好きだって思うこととかものとかを突き詰めていったり追いかけていったりすることって、〔好きで〕い続けることって、やっぱりその、なんだろう、自分の中で限界が来てしまうのが怖いというか、なんていうんだろう、これほんとに私好きなのかな?とか、もうなんか、あれ実は今まで好きだって思ってきたことって間違ってたのかな?とか、一気に自信がなくなってしまうことがあると思うんですよ。でも、自分の話になってしまうんですけど、私はやっぱり歌が、歌うことが大好きだなって、今日あらためてステージに立たせていただいて思うことができたし、私にとっては歌ですけど、きっとみなさんも、何かね、日常生活で私は僕はこれが好きですって思うことってきっとどこかにひとつはあると思うので、その気持ちを、私とかのんちゃんからのお願いなんですけれども、ずっとずっと、忘れないで大切にしてほしいなって思います
注:〔〕内は筆者による補足


好きだと思ってきた気持ちが間違っていたんじゃないか。それは伊達さん自身の経験した感情以外の何物でもないのだろう。

伊達さんの好きなことは「歌うこと」である。そして、Liella!1stライブツアーでまさにその「歌うこと」に悩み落ち込んだということを、彼女は様々な場所で語っている*2。彼女がこのMCで語ったのも、まさにこの話であった。

そして私は「生きてきて初めて経験した」というこの日の飾らない言い方を素敵だと思った。


     * * *


伊達さゆりさんは間違いなくすごいものを持っていて、そんな伊達さんを我々ファンはラブライブ!シリーズの象徴のように、ある種神格化して見てしまうところがあるように思う。彼女自身もファンからのそういう目線をよくわかっていることだろう。

だが、このMCから私が感じたのは、彼女の、もっと素朴な一人の人間としての姿だった。


彼女は根本的には、ただ純粋に歌が好きな普通の女の子なのだろうと思う。高校時代は部活のない日は放課後家に帰って一人で歌っていたというし*3、ライブ前に音響の調整をしてもらうときには「お風呂だと気持ちよく歌える」とスタッフさんに伝えるのだという*4。こうしたなんとなく残念さの漂うエピソードからは、彼女が本当にひたすら歌うことが好きで、そこに彼女の原点があるのだということを伺い知ることができる。

そんな彼女にとって、1stライブツアーはどのような時間だったのだろう。

伊達さゆりさんが1stライブツアーで具体的にどのような苦しみを内面に抱えていたのか、私には知る由もない。だが、実際のところ1stライブツアーの伊達さんの歌に不安定さを感じさせる部分があったのは否めないし、多分それは彼女の直面していた問題の片鱗だったのだろう。少なくとも彼女の言葉から推測するに、それは、「歌うことが好き」というシンプルで明るい世界が、責任や技量といった外部のいろいろなものによって破壊された経験だったのだと思う。

私は伊達さんほどの重圧を背負ったことは無いが、そういう意味で似たような経験は持っている。好きだと思ってきた気持ちが間違っていたんじゃないか──きっと、物凄く物凄く怖かったはずだ。


今回の2ndライブ横浜公演の伊達さんのパフォーマンスは、1stライブツアーと比べて明らかに進化していた。1stライブツアーからの2ヶ月でおそらく彼女は何かを乗り越えたのではないか。そう感じさせられた。

そして、そのことが言葉の端々からも伝わってきたのが、上述のMCだった。生きてきて初めて経験したと少し恥ずかしそうに話す彼女の言葉は、何の気負いもない、小さい・・・言葉だった。だからこそ、彼女が今大きな山を越えたのだということ、そうして、人間として一回り大きくなったのだということが、その言葉からは確かに伝わってきたのだった。


     * * *


ひょっとすると今、Liella!のセンターとしての伊達さゆりさんの、固有のあり方ができつつあるのかもしれない。


伊達さんがさまざまな場所で1stライブツアーの経験を語るのは、それだけその経験が鮮烈で、衝撃的なものだったからなのだろう。おそらく彼女にとってそれは、その経験無しにはもはや自分を語ることができないような、そういう類のものなのだ。

そして、苦しい時間の中で彼女が感じたこと、彼女の支えになったもの、彼女が見つけたもの、そのすべてが、これからの彼女を新しく形作っていくに違いない。そのすべてが、「歌うことが好き」という彼女の世界をより深いものにしていくに違いない。もちろんその中には、彼女の心を支えてくれた、澁谷かのんがいる。


Aqoursにμ'sの影が付きまとっていたように、Liella!にもまたAqoursの影が付きまとう。伊達さんにとって、伊波杏樹の存在感はこの上なく巨大なものであるはずだ。しかし大切なのは、伊達さゆりは伊波杏樹ではないということだ。

好きでい続けることってそう簡単じゃない──2ndライブのステージで元気いっぱいにパフォーマンスする伊達さゆりさんは、生きてきて初めての巨大な壁に向き合った先にいる彼女である。今やその輝きは、Aqoursがつくってきたラブライブの物語には回収されることの無い、徹頭徹尾彼女だけのものだ。



伊達さゆりさんの歌唱力、笑顔、元気いっぱいに踊る姿、そうしたものに私は魅了される。

それととともに私が素敵だと感じるのは、彼女が澁谷かのんとともに、19歳の等身大の自分を一生懸命生きている姿だ。そこから生まれる、彼女の飾らない言葉だ。

私は、彼女にラブライブ的な記号を投影するのではなく、そういう彼女の姿をこそ、しっかりと眼差していきたいと思う。


さて、そろそろ筆を置こう。本来キャストの内面を推測してあれこれ語るのはおこがましい気がしてあまり好きではないのだが、今回のMCから感じたことはどうしても書き留めておきたくて、まとまりのないままにこのような文章を書いた。

私はLiella!を、第4のラブライブとしてではなく、紛れもないLiella!として好きになった。そして今回感じたことは今後、その気持ちの重要な足場になるような気がしている。





おわり。

*1:ichikingnoblog.hatenablog.com

*2:私自身のメモ代わりに、思いつくものをいくつか挙げておきたい。 ①Liella!1stライブツアー宮城公演:Tiny Starsの弾き語りを披露した際のMCで、落ち込んだ気持ちになることも度々あった中で、ギターの練習をする時間がただ純粋に楽しくて、ギターに笑顔をもらっていたと語られていた。 ②『ラジオどっとあい 伊達さゆりの伊達ちゃんは伊達じゃない!!!』最終回:伊達パパが登場した際に、1stライブツアー中はお母さんに毎晩電話で話を聞いてもらっていたという話が出ていた。 ③2022年3月3日のLiella!生放送:「What a Wonderful Dream」のかのんパートである「なんでできないのかな その気持ちが鍵さ」という歌詞のおかげで、悩むのが怖くなくなったと語られていた。間接的な言い方ではあるが、これもおそらく1stライブツアー期間中の話であろう。 ④Web上のインタビュー記事:本記事のMCの内容と近いことが下記の記事でも語られている。私の記事なんか読んでいる暇があったらこの記事を読んで欲しい。 febri.jp

*3:『ラジオどっとあい 伊達さゆりの伊達ちゃんは伊達じゃない!!!』第2回より(うろ覚えなので第1回かもしれない)。カラオケではなく家で歌うというのが、なんというか、良い。

*4:『LoveLive!Days Liella! SPECIAL Vol.1』(2021年12月、アスキー・メディアワークス)、p58-59の岬なこさんのインタビューより。岬なこさんが自分の歌声が埋もれてしまうことに悩んでいると、伊達さゆりさんがこう教えてくれて、ヒントになったのだという。