どうもこんにちは。今回は『ラブライブ!スーパースター‼』3期第6話「タカラモノ」の感想を書きたいと思います。
いや、スパスタ3期、なんでこんなに毎回良いのでしょう。
この第6話は、1期第1話~第3話へのアンサー回ともいえる内容で、アニメを3期までやってきたからこその、そして1期生の3年間分を描いてきたからこその良さがつまっていましたね。
トマカノーテが一緒に歌う流れは少々無理矢理ではありました。ですが、1期第3話「クーカー」へのアンサーとして、可可とかのんが並び立って歌うことが物語の感情面の筋としては絶対的に必要なことだったのだと思います。なので、そちらを優先した脚本だったという捉え方を私はしています。
アニメ3期の1期生は、様々な場面で大人になったと感じさせます。今回は特にその「大人になる」ということが一つのテーマであったと言えるでしょう。
この第6話において、可可は「大人」になろうとしていました。
好きなことを追い求めるわがままな時間=青春に別れを告げ、もともとの自分が求められていたことへと戻る。そうして両親に恩を返す。それが、可可の考えていたことでした。
可可:そんなの甘い考えです。親には本当に自由にやらせてもらいました。可可の青春はここまで。もうすぐ終わるんです。
(『ラブライブ!スーパースター‼』3期第6話)
親の思いを大切にすること──可可にとって、「大人」とは、他者を大切にし他者に対する義務に従って生きることのできる人のことなのでしょう。それは確かにひとつの「大人」観として間違っていないと思います。そして可可にとって両親が大切な存在であるからこそ、可可はそのような「大人」になろうと考えていたのでしょう。
しかし問題は、それが自分のわがままを犠牲にすることを意味するのか、ということです。
少し話が逸れますが、精神保健の勉強をすると教わることになる考え方の中に「アサーションassertion」というものがあります。
assertとは「主張する」という意味の英語ですが、特に精神保健の文脈の中では、「自分と相手の双方を大切にした自己表現」といった意味で使われます。つまり、一方的に自分の主張をするわけでもなく、かといって相手の主張に受け身になって自分を押さえつけるわけでもない、そんなバランス感覚の中で自分の考えを相手に表現するということ。このような「アサーティブ」なコミュニケーションの技術は、対人援助職に求められる技術の一つであるとされます。
このアサーションの考え方を補助線にすると、他者を大切にすることと自分を大切にすることとは必ずしも矛盾しないということ、両立することが可能だ、ということが見えてきます。
「大人になる」とは、まさにその、自分と他者の双方を大切にできるバランス感覚を身につけることだとは言えないでしょうか。
可可は、両親の思いを大切にすることを、自分のわがままを犠牲にすることとどこかイコールで考えてしまっていました。しかし、本当は、双方を大切にするもう一つの道があり、可可が「大人」として探すべきはその道だったのです。それはきちんと対話をし、両親に対してきちんと自分を表現するということに他なりません。
可可にそうする勇気を与えたのは、日本で出会った親友たちの言葉でした。
すみれ:私は見たいわ!可可が、ステージに立ち続ける姿を!
(『ラブライブ!スーパースター‼』3期第6話)
かのん:好きなことを頑張ることに、おしまいなんてあるの?
可可:それって…
かのん:可可ちゃんが私にくれた、私の宝物にしている言葉。可可ちゃんが自分に嘘をつく姿なんて、私見たくない!私は卒業したらウィーンに歌を勉強しに行く。だから可可ちゃんも、まっすぐ突き進んでほしいよ。
(『ラブライブ!スーパースター‼』3期第6話)
可可への押し付けになるかもしれないその言葉を、勇気を出して投げかけた可可の2人の親友たち。すみれの言葉、かのんの言葉、そのどちらも、ある種彼女ら自身のわがままにすぎないのかもしれません。
しかし、そのまっすぐな言葉は可可に、「わがまま」を大切にすることを思い出させます。
今の可可の中には、日本で出会った仲間たちと過ごした時間の中で生まれたひとつの「わがまま」があります。
可可がかつて思いをぶつけたかのんが、すみれが、今、その「わがまま」がかけがえのないものであることを教えてくれたのでした。そしてそれを大切なものとして表現することも、ひとつの「大人」としての行動なのだということも。
ラブライブ!シリーズでは、そのキャラクターが取り戻すべき元来の純粋な気持ちを、幼少期の姿を登場させて表現する演出がよく用いられてきました。しかし今回は、中学生時代の可可が登場こそしますが、幼少期は登場しません。
それは、今回の話が描こうとした変化が「大人になる」という変化であり、「元来の純粋さへの回帰」とは異なるベクトルの変化だったからなのではないでしょうか。
いったい、大人になるとは、どういうことなのでしょう?
迷いながら戸惑いながら大人へと成長していく1期生たち。
その姿を眩しく感じた第6話でした。
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