深呼吸の時間

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歌舞伎を見た話:「三人吉三巴白浪」「土蜘」

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わたくし,たまに歌舞伎を見に行きます。
昨日も歌舞伎を見てきました。2ヶ月ぶりくらいかな?
その感想をゆるっと書いていきます。


見たのは歌舞伎座の五月大歌舞伎の第一部。
演目は「三人吉三巴白浪さんにんきちさともえのしらなみ」と「土蜘つちぐも」の2演目でした。楽しかった…。



私の目当ては「三人吉三巴白浪」の方。

吉三きちさ」という同じ名前を持つ3人の盗賊が出会い,義兄弟の契りを結んで活躍し,やがて破滅していく物語です。
今回上演の場面はまさに三人が出会って義兄弟の誓いをする場面で,人気があってよく上演される場面。


今回は中村隼人なかむらはやと坂東巳之助ばんどうみのすけが吉三のうちの2人として出演するので,これは熱いと思って見に行くことにしたんですね。
2人は以前見た「新作歌舞伎 NARUTO-ナルト-」で主演(ナルトが巳之助,サスケが隼人)を務めていて,それがまーじで良かったんで好きになりました。最近は隼人や巳之助が出演してると見に行きたくなりがちです。
もう一人の吉三は尾上右近おのえうこん。3人とも,今をときめく若手の花形歌舞伎俳優です。

それぞれ,隼人が侍くずれの盗賊「お坊吉三」を,巳之助が修行僧上がりの盗賊「和尚おしょう和尚吉三」を,右近が女装して悪事を働く「お嬢吉三」を演じます。


しかし一生の不覚。

開演に10分遅刻しました。

家で眼鏡探してたら家出るのが遅くなってしまいました。

そしてその10分がなかなかに命取りでした。


この演目には,名セリフとされるものがあります。

それは「月もおぼろ白魚しらうおかがりかすむ春の空(…中略…)こいつぁ春から 縁起がいいわぇ」という,七五調の長セリフ。
ある月夜,お嬢吉三は,通りすがりの女性を川に突き落として懐の金を奪います。その金を見てみるとなんと百両という大金。なんという幸運だろうと,その喜びを込めて唄い上げるのが上のセリフです。お嬢吉三という悪党のふてぶてしさを鮮烈に印象付けてくる痛快なセリフ。

さて,「三人吉三」,昔見たことがあったものの細かい段取りは全然覚えていなかったのですが,10分遅れで場内に入ってみたら,なんとそのセリフのシーン,もう終わってるぽい雰囲気じゃないですか。

そうか,冒頭のシーンだったんだっけ……つらい……。

10分の遅刻はガチで駄目なやつでしたね。ラブライブフェスで未体験HORIZONを聞き逃すようなもんです。


とはいえ残りの部分は楽しみました。

百両を手にしたお嬢吉三の前に現れ,百両を奪い取ろうとするお坊吉三。2人は百両をめぐって切り合いを始めます。
そこにさらに和尚吉三が通りかかり,その争いを調停します。
そして「吉三」という名前のよしみから,三人は和尚吉三を中心に義兄弟の契りを結ぶことに……。


いやあ,とても良きです。
盗賊を主人公にした作品を歌舞伎の世界では白浪物しらなみものといいますが,白浪物,やっぱ良いなあとなりました。

月の夜,時は節分,華やぐ江戸の町。その片隅でひっそりと三人の盗賊が出会う。上手く言えないんだけど,このシチュエーションがまずありえん美しいんですよね。

役者の技量についてはあんま語れないのですが,
対峙し合う肝の据わった2人の悪党,お坊吉三とお嬢吉三に扮する隼人と右近が,とてもかっこいいです。お顔も良いのでもうね,10000点。
加えてその2人の間を取り持つ和尚吉三の人情味と器の大きさを,巳之助が表現します。盗賊なのにどこかあたたかい。しゅき。

うーん,しゅき。

吉三3人には,まっとうに生きることを諦めた悪人たちだからこその洒脱さというのがあります。そしてそんな悪人同士の人情。

たまらん。


そういえば2ヶ月前に見に行った時に感動した「直侍なおざむらい」という演目も,同じ作者の書いた白浪物でした(尾上菊五郎演じる主人公が粋すぎてやばかった)。
白浪物,他は 「弁天娘女男白浪べんてんむすめめおのしらなみ」「白浪五人男しらなみごにんおとこ」くらいしかわからんのですが,もっといろんな作品を知ってみたいなという気持ちになってます。



続いて「土蜘つちぐも」。


長さとしては「三人吉三」が30分程度で「土蜘」が1時間超なので構成としてはこちらがメインか。
これも昔一度見たことがあります。でも全然内容覚えてない。なんか歌舞伎新古演劇十種というのの一つらしい。
比叡山の僧に化けた土蜘の精が暴れまくって退治されるというストーリーの,松羽目物まつばめものの舞踊劇です。同名の能の戯曲をもとにして作られた演目だそうな。今回土蜘の精を演じるのは尾上松緑おのえしょうろく


今回筋書(パンフレット)を買っていなかったので,「土蜘」のあらすじを知らない(覚えてない)状態でどれだけ話が理解できるかチャレンジをしました。

セリフと長唄から頑張って状況を理解していこうとしたのですが,うん,わからん。半分くらいしかわからん。

松羽目物なのでセリフがかなり格式ばっています。「そうろう」「さぶらえ」ってめっちゃ言ってる。尊敬語とか謙譲語とか丁寧語がめっちゃ組み合わさってる。言葉の頭に「おん」ってめっちゃつけまくってる。平家物語みたいだ。古文の勉強になります。ありがとうね。

何がやばいって,源頼光(演:市川猿之助)という偉い人とその家来の平井保昌(演:坂東亀蔵)という人が出てくるのですが,途中まで保昌を頼光だと思って見てました(亀蔵の保昌を見ながら「猿之助いつもと感じ違うな…?これが役者というものか」とか思ってた)。
あと,頼光が長いこと病にかかっておりその病が実は土蜘の精に呪われてたせいだったという筋立てなのですが,「病にかかってるのってこの偉い人でいいんだよな…?」って思いながら見てました。

1回見たことあるはずなのに,自分の理解力の無さよ……(細かいところを理解できなかったせいで途中眠くなってたのは秘密)

まあいいのです。こまけえこたあいいのです。


やはり面白いのは,後半の土蜘の精が暴れるシーン。

暴れる土蜘の精が,めっちゃ細くて長い何本にも分かれた紙テープみたいなのを手から繰り返しファサァァっと放ちます。蜘蛛の糸に見立てた演出です。千筋の糸というらしい。
これを,保昌ら頼光の家来たちと戦って舞台を縦横無尽に駆け回りながら,流れるように行っていく。演じる松緑と糸を渡したり回収したりする後見の人との連携プレーなのですが,これがすごいんですよね。

ただ,土蜘の精が正体を現す前の,比叡山の僧智籌ちちゅうに化けてる状態の時も魅力的でした。
智籌は頼光の病を治すために祈祷をしに来たと言って頼光の館にやってくるのですが,音も無く花道上を歩いてくるのがとっても不気味。喋り方も,地の底から響いてくるような低い声でとっても不気味。
見た目というよりもそういう雰囲気の部分で妖しいやつだってことがビンビン伝わってきて,無限に強そうでしたね。


「土蜘」は花道も含めてダイナミックな立ち回りをする演目でしたが,花道が近い2階席だったので,なかなかに堪能できました。



とはいえ,どっちかというと今回心に響いたのは「三人吉三」の方だったかな~。

「土蜘」のように大立ち回りをする荒事的な演目はもちろん楽しいのですが,今の自分は登場人物の人情とか生き様とかがもっと見えるものを求めている気がする。

三人吉三」みたいな白浪物はそこらへんのバランスが良いんだろうなって思います。
盗賊のヒーロー性とか悲哀とか人情とかユーモアとか,あとは江戸の町の風情とか……見ているとそういういろんなものをいっぺんに感じる。それで,なんだかすごく良いなあってなるんですよね。しみるんですよね。

ああ,やっぱ「三人吉三」冒頭の名台詞聞き逃したのまじでもったいなかった。
今月の公演はもう行けないけど,またそのうち「三人吉三」リベンジしなきゃ。次は同じ過ちは繰り返さないぞ(フラグではない)。
願わくはまた同じメンツでやってください。



てか今この文章書きながら調べてたら,「土蜘」の脚本を書いたのも河竹黙阿弥かわたけもくあみなんだってことを知りました。

河竹黙阿弥とは,明治時代に活躍した七五調のセリフ回しを得意とする脚本家で,白浪物は大体この人の手による作品です。「三人吉三巴白浪」は黙阿弥作として超有名。先月私が見た「直侍」も黙阿弥作らしいです。

しかし,なんと「土蜘」も黙阿弥作だったとは思いませんでした。全然違うジャンルの戯曲なのに。黙阿弥ちゃん,どこにでもおるな。完全に歌舞伎界の畑亜貴じゃん。

黙阿弥ちゃん,推すか。



はあ,楽しかったずら。

***Thank you for reading***