深呼吸の時間

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Aqours4thライブに寄せて(1)——〈始まり〉の曲としての「Thank you, FRIENDS!! 」

 

こんにちは、いちきんぐです。

 

まず言っておきたいのは…
Aqours紅白歌合戦出場本当におめでとう!!!

テレビ番組に最近結構出演していたこともあって紅白くるかもとは思ってましたけど、まさか本当にくるとは……(矛盾)。

晦日が楽しみです。

 

さて、今回の記事が本ブログの最初の記事となるわけですが、今回は、目前に迫ったAqours4thライブのテーマソングである「Thank you, FRIENDS!!」っていったいどういう曲なんだろうということを、主にその歌詞から考えてみたいと思います。

 

4thライブ2日前。滑り込みです。

 

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実は「Thank you, FRIENDS‼」を最初に聴いた時、私はこの曲をすんなりと受け入れられませんでした。

 

というのも、その時は「Thank you, FRIENDS!!」というこのバラードがただ〈これまで〉を振り返るだけの曲に思えたからです。

つまり、“FRIENDS”が〈これまで〉の軌跡をともに歩んできてくれたことに対して感謝を伝えること、それだけがこの曲の主題であるように思えたからです。

 

この曲が発売されるよりもほんの少し前、Aqoursと私たちは3rdライブツアーでAqoursの力強く輝かしい〈これまで〉を一緒に確かめたばかりでした。

そんな後に発売された4thライブのテーマソング。

 

それが“FRIENDS” と歩んだ〈これまで〉の軌跡を振り返るだけの曲だと思ってしまった私は、なぜ次のナンバリングライブになってなおも執拗に〈これまで〉を振り返るのだろう、と少し胸焼けするような感覚を覚えました。

4thライブのあともAqoursのキセキは続くのだから、「ホップ・ステップ・ワーイ!」のように、またひたすら前を向いて走ってほしい。「急がないと置いてくよ」とまだまだ私たちにその背中を追いかけさせてほしい。

まだ「ありがとう」なんて言わなくていいから——。

そういうふうに私は感じました。

 

それとともに、Aqoursのライブが今このタイミングで東京ドーム——μ'sにとっては終着点だったあの場所——で行われることの意味もよくわかりませんでした。

大好きなAqoursがそのような最高の舞台に立つことは誇らしい。でも、東京ドームという舞台は、やはり——やがて訪れるであろう——最後の舞台としてこそふさわしいのでは?

そんな気持ちを心の片隅で抱きました。

 

このようなわけで、私ははじめ、「Thank you, FRIENDS!!」という曲が持つ意味、東京ドームという舞台が持つ意味、そして結局のところは、4thライブが持つ意味をいまいちつかめませんでした。

 

そこでこの記事では、「Thank you, FRIENDS!!」に対する私が初めに抱いた上のような理解を4thライブ前にぶっ潰すという作業を行ってみようと思っています
※なお、“FRIENDS”が誰のことを指すのかに関しては、様々な解釈が可能です。Aqoursの誰かにとっての他の8人のことだとも、浦の星の“10人目”のことだとも、私たちファンという“10人目”のことだとも考えられます。あるいはそこにμ'sを含まてしまってもいいかもしれません。これに関する答えはオープンにしておきたいので、本記事では“FRIENDS”が誰であるのかを確定せず、この言葉をそのまま用いて話を進めます。


果たしてこの曲は〈これまで〉を振り返るための曲なのでしょうか。


この曲の主題は“FRIENDS”が〈これまで〉の軌跡を共に歩んできてくれたことへの〈感謝〉に尽きるものなのでしょうか。

 

ところで、9月29日に発売された電撃G'sマガジン増刊号(11月号増刊)からは、キャストそれぞれの「Thank you, FRIENDS!!」に対する思いを知ることができます。
目を惹くのは、この曲を前向きな曲として語っているキャストがいることです。

 

逢田さんは次のように語ります。

卒業や別れを感じさせる雰囲気があるようで、その実素直に感謝を歌った曲だと感じています。その上でこの先に何が待っているのかな、と、純粋に未来を見据えていると解釈しました。

                           (電撃G’s magazine2018年11月号増刊, p33)

 

また、高槻さんは次のように語っています。

ライブのテーマソングだからAqoursらしい、元気でキラキラした感じの曲がくるのかなと思っていたら、まさかのバラードでびっくりしました。しかも卒業ソングっぽい雰囲気だからどういうことなんだろうって。でも歌詞をよく読んでみたら、【これからも叶えようよ】とか【もっと先へ飛び出すんだ】とか、“まだまだ行くよ”という前を向いた内容でしたね。歌っているうちに「もっと先に行くよ!」という気持ちになりました。

                           (電撃G’s magazine2018年11月号増刊, p35) 

 


UTX前で千歌がμ'sを見たあの時から始まりラブライブ優勝と浦の星の閉校へと終着した“WONDERFUL STORIES”。物語の中で、Aqoursと浦の星の軌跡は一つの〈終わり〉を迎えました。

そのことをよく知っている私たちには、「Thank you, FRIENDS!!」の「ありがとう」が、そんな〈終わり〉の地点から〈これまで〉を振り返りながら言われているもののように、つまり卒業や別れの時に言われるような「ありがとう」——「さよなら」の代わりの「ありがとう」——のように聞こえてしまいます。バラードという曲調があいまって、一見するとそう感ぜられてしまうのです。

 

しかし、高槻さんが言うように、歌詞にはむしろ前へと進もうとする表現が多く登場しています。

消えないでって呟きながら もっと先へ飛び出すんだ

                                                                                                              (Thank you, FRIENDS!!)


僕らのミライ(一緒にはじめよう) 

何度もはじまるんだね             

                                    (Thank you, FRIENDS!!)


叶った願いはいくつある? 

これからも叶えようよ 

生まれてくるトキメキの数は 

ああ数え切れない! 

海風に

誘われて 

ココロには 

波が立って立って 

どこへどこへ向かえばいいの? 

みんなと探そうか!                     

                                 Thank you, FRIENDS!!

 

ここに歌われているのは、何度もはじまるということ。これからも叶えたい願い。新しく生まれてくるトキメキ。これからどこへ向かうのかみんなで探したいということ。


つまり、歌われているのは〈これまで〉ではなく〈これから〉です。それは、海風が誘う “ミライ” に向けた新しい航海です。

 

「Thank you, FRIENDS!!」という曲は、〈これまで〉を振り返るだけの曲では決してないし、その「ありがとう」は卒業や別れの「ありがとう」ではない。逢田さんや高槻さんの言うように、この曲には未来を見据えた前向きさがあるのです。


とはいえ「Thank you, FRIENDS!!」に〈これまで〉を振り返る表現が多く登場することも確かです。

まるで夢のなか泳いできた魚さ

                                    (Thank you, FRIENDS!!)


どんな時でも(どんな時にだって) 

感じていたよ(感じていたんだ君がいると) 

だからいつも(そしてここまで)

負けないでやってこれた

                                                                                                              (Thank you, FRIENDS!!)

 

この曲は明らかに過去を振り返ってもいます。

この曲の「ありがとう」は、やはり“FRIENDS”が〈これまで〉を共に歩んできてくれたことに対する感謝であるように思えます。

 

では、〈これから〉へ向かう姿勢と〈これまで〉への回想とはどう関係するのでしょう? つまるところ、この曲は何を主題にしたいのでしょう?

 

実はこの曲には、その題名に反して、サビに1回ずつ登場する「Thank you, FRIENDS!!」というフレーズとCメロに1回だけ登場する「Thank you my friends」というフレーズの他に、「ありがとう」を言う言葉がまったく登場しません。

繰り返し言われるのはむしろ「会えてよかったな」という気持ちであり、「大好きだよ」という気持ちです。

 

このことが、〈これまで〉の話が〈これから〉の話にいかにつながるのかという問題を考えていく足掛かりとなります。

 

「ありがとう」と、「会えてよかったな」「大好きだよ」はどちらもある種の肯定の言葉でありながら、完全には重なりません。少し抽象的にはなりますが、その違いは次のような点にあるように思います。

 

「ありがとう」はそれ以前に何か相手がしてくれたことに対して発せられます(ここでいう「それ以前」というのは直前であることもあればある程度遠い過去であることもあります)。それゆえ、「ありがとう」とは、相手の過去の行為を肯定する言葉です。

対して、「会えてよかったな」は相手と一緒にいることができている〈今〉を肯定する言葉であり、「大好きだよ」は〈今〉一緒にいるその相手の存在そのものを肯定する言葉です。

 

つまり、「ありがとう」は一緒に過ごしてきた〈これまで〉へ、「会えてよかったな」「大好きだよ」は一緒にいる〈今〉へと目を向けて言われる。このような違いがここにはあると私は考えます。

そして「Thank you, FRIENDS!!」のサビで重ねて言われるのは前者の「ありがとう」ではなく、後者の「会えてよかったな」や「大好きだよ」です。

これは、この曲が表現しようとしている気持ちの中心が、〈これまで〉に対する気持ちよりもむしろ〈今〉に対する気持ちにあるということを意味するのではないでしょうか。

 

ただし忘れてはならないのは、このような違いがありつつも同時に、「ありがとう」と「会えてよかったな」「大好きだよ」は強く結びついたものだということです。

“FRIENDS”と一緒に過ごしてきた〈これまで〉があってこそ、一緒にいる〈今〉がある。

だから、〈これまで〉の軌跡を回想することで “FRIENDS” に対する「ありがとう」という思いを実感すればするほど、「会えてよかったな」「大好きだよ」という思いも強くなります。

 

「会えてよかったな」。「大好きだよ」。そこに込められた気持ちは、“FRIENDS” と一緒にいる〈今〉に対する幸福感であると言っていいでしょう。

要するに、「Thank you, FRIENDS!!」で表現される気持ちの中心をなすのはあくまで、“FRIENDS”と一緒にいる〈今〉に対する幸福感であり、この曲の「ありがとう」はそこに結びつくものなのです。そして、“FRIENDS”と過ごしてきた〈これまで〉の軌跡への回想が、その「ありがとう」を実感させるのです。

 
 a:〈これまで〉への回想
  → b: “FRIENDS”への「ありがとう」という気持ち
    → c: “FRIENDS”への「会えてよかったな」「大好きだよ」という気持ち
              = "FRIENDS" と一緒にいる〈今〉に対する幸福感

 

 

この時点で、「Thank you, FRIENDS!!」という曲を〈これまで〉を振り返るための曲と感じてしまった私の最初の印象はかなり疑わしいものになります。

 

ここにさらに〈これから〉の話が結びつきます。

 

“FRIENDS”とともに歩んできた〈これまで〉が導いてくれた〈今〉は、“FRIENDS”とともに漕ぎ出す〈これから〉がはじまる場所でもあります。

 

その〈今〉の中では新しい「トキメキ」がどんどん生まれてきている。「海風」に誘われて「ココロ」は波立っている。そんな新しい〈始まり〉の場所、それが〈今〉です。

 

彼女らの〈今〉の心は、〈これから〉の航海の予感に高揚しているのです。


彼女らは「僕らのミライ」を「一緒にはじめよう」と言います。

カタカナで書かれる「ミライ」、それが想起させるのはアニメ1期最終話の挿入歌、「MIRAI TICKET」。

 

彼女らの〈今〉の心に生まれてくる数え切れない 「トキメキ」 はまさしく、〈これから〉の航海へ旅立つための新しい“ミライチケット”です。

 

この“ミライチケット”は、〈これまで〉の軌跡の結果として、‟FRIENDS”と一緒になって手にしたものに他なりません。だからAqoursにとってその航海は、“FRIENDS”とともに漕ぎ出す航海です。〈これまで〉の軌跡をともに歩んできた“FRIENDS”が横にいる、心強い航海です。

 すなわち、 “FRIENDS” とは、〈これから〉の航海へと一緒に漕ぎ出す頼もしい仲間なのです。

 

君がいてああ 心強いミライ 

いつでも僕らと、だね!
                           (ホップ・ステップ・ワーイ!)

 

 

この曲で表現される気持ちの中心をなすのは FRIENDS” と一緒にいる〈今〉に対する幸福感なんだという話を既にしました。上のようなことを考慮することで、この幸福感というものをより詳しく規定することができます。

 

“FRIENDS”と一緒にいる〈今〉とは、終着点としての〈今〉ではなく、〈始まり〉としての〈今〉です。

 

“FRIENDS” とは、〈これまで〉の軌跡をともに歩んできただけでなく、〈これから〉の航海へと一緒に漕ぎ出す頼もしい仲間でもある“Friends” です。

 

したがって、「Thank you, FRIENDS!!」という曲で表現される気持ちの中心をなすもの=この曲の主題は、次のようなものだと言えます。

  • 〈これから〉の航海へと一緒に漕ぎ出す頼もしい仲間としての “FRIENDS”と一緒にいる〈始まり〉としての〈今〉に対する幸福感

 

〈これまで〉の軌跡への回想は、“FRIENDS”の頼もしさの実感や、“FRIENDS” への「会えてよかったな」「大好きだよ」という気持ち(=一緒にいる〈今〉に対する幸福感)へとつながっていきます。しかし、この回想は決してこの曲の主題ではありません。

 

「Thank you, FRIENDS!!」という曲は、〈始まり〉の曲なのです。

 

以上より、“FRIENDS”が〈これまで〉の軌跡をともに歩んできてくれたということに対して感謝を伝えようとしている曲としてしかこの曲を考えないなら、この曲の主題を捉え損なっていることになるのではないかと、今の私は思っています。
少なくとも、私が「Thank you, FRIENDS!!」に対して最初に抱いた後ろ向きな印象は、まったく誤った印象として、ぶっ潰されるべきものなのです

 

〈終わり〉の曲っぽい外見をしているけど、ちゃんと考えると実は〈始まり〉の曲である——もしかするとこれは、この曲に意図的に仕込まれた仕掛けなのかもしれません。

 

Aqoursの〈これまで〉の軌跡——‟WONDERFUL STORIES”——は、浦の星の閉校とともに幕を下ろしたように思えました。

 

しかし、Aqoursはこの軌跡を〈今〉という〈始まり〉に至る物語として再び捉えなおそうとしているように思えます。そうした上でAqoursは今、「みんなと探そうか!」と“FRIENDS”に呼びかけながら、“ミライチケット” を手に次の航海へと漕ぎ出すのです。

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みんな!一緒に、輝こう!

                                   (テレビアニメ1期13話)

 

 

みんなで0を1にした物語。

それを確かめながら、胸を張って、自信を持って、そのみんなで次の未来へ漕ぎ出すための曲。

 

消えないでって呟きながら もっと先へ飛び出すんだ

                                                                                                             (Thank you, FRIENDS!!)

 

 それが「Thank you, FRIENDS!!」という曲なのではないでしょうか。